紅葉の始まったハルダンゲル高原(Hardangervidda/ハルダンゲルヴィッダ)を歩いてきました。
今回の目的はLufsjåという湖の前にあるDNT Lufsjåhyttaに泊まること。
キノコを採ったり、ベリーを食べたりしながらのんびり歩きました。
概要
・日程:2023年9月9日(土)~10日(日)
・天気:晴れ 時々曇り・霧
・アクセス:登山口までオスロから車で2時間30分
・駐車場:あり(頑張れば10台近くは停められそう?)
・通行料・駐車料金:通行料70NOK(カード支払い)、駐車料金なし
・登山口の標高:820m
・Lufjåの標高:1230m
・距離:24.5km(往復)
・累積標高:564m
ルート
UT.noにてLufjåで検索
Googleマップ
LurestølというHytteがいくつか建っているエリアから本格的に登っていきますが、その2kmほど手前に駐車場とゲートがあります。
Lufsjåへのルート選び
UT.noにはlufsjåへのルートは4つ記載されています。
私たちは④のLurestølからのルートで行きました。
どこも標高差はあまりなくなだらか。
私たち以外の人たちは①のルートを使っている人がほとんどだった印象です。
以下距離の記載はLufsjåまでの片道です。
①Killingskaret:18km
他の山からの縦走路として使われる道なのでおそらく通っている人は一番多い。
②Breiset:17km程度
直線距離は短そうに見えるものの、湿地帯が多いので足をとられて時間がかかるかもしれないと判断してやめたルート。(ハルダンゲル氷河周回の時に膝まで泥に浸かって地獄を見てからトラウマ)
結局湿地帯を迂回すると①と同じくらいの距離になると思われます。
③Imingfjell Turistheim:23km
ここも多く人が通るルート。距離は長いが景色はずっと良さそう。
④Lurestøl:林道2km+登山道10km程度
林道歩きがだるいが自転車を持っていけば帰りが楽そうと判断して選んだルート。
①③の道より歩く人は少なそうなので、藪化していたり、道が分かりにくくなっているのでは?とやや心配だったものの、道は綺麗で分かりやすかったです。
駐車場情報
料金を支払うゲートを通った後、しばらく進むと再びゲートがあって行き止まりになるところが駐車スペース。
除雪機?クロカンの整備車?が置いてあります。
駐車スペース自体はそんなに大きくないものの、そうそう人が通るルートでもなさそうなので埋まることはなさそうです。
山行記録
最初は林道サイクリング
駐車場から自転車に乗って林道を走ります。
林道は2km程度なので、自転車がなくても30分程度歩くだけ。
林道脇にキノコが生えまくっていてなかなか進まず、歩いた方がよかったんじゃないかと思ったりもしましたが、帰りは下り坂すいすいで楽でした。
Hytteの脇から登り始める
LurestølのあたりはHytteがいくつか建っているエリアで、hytteの持ち主は駐車スペースにあるゲートを開けて林道を車で通行できる様子。
林道の突き当りにある坂道を登った場所にHytteがあり、脇に登山道がついています。
登山道脇に自転車をデポしてから登り始めました。
最初、登山口の場所がはっきり分からずウロウロしていたらHytteにいたおじいちゃんが出てきてくれて「どこ行くの?前にも行ったことはある?地図は持っているか?」と声をかけてくれました。
登山道もキノコだらけ
UT.noには点線で記載されていたのでどのくらい歩けそうな道かは分からなかったものの、かなり綺麗で歩きやすい道でした。
道の脇にはBlåbær(ブルーベリー)、Tyttebær(コケモモ)、Blokkebær(クロマメノキ)などのベリーがいっぱい。
そして驚いたのはキノコ。
大型化したbrunskrubb(ヤマイグチ)、Rødskrubb(キンチャヤマイグチ)がそこらじゅうにありました。
しばらく雨が降っていないので新しいキノコは少なめ、そして乾燥してしまったものが多かった印象。
しかしまあ、こんなに大きくなるまで誰にも採られていないし、ひっくり返して確認されてもいない様子だったので、やはり通る人が少ない道なのだろうなと思いました。
途中でSteinsopp(ポルチーニ)もひとつだけゲットしました。
森林限界を超えると高原が見えてくる
樹林帯を抜けて視界がだいぶ開けてくると、遠くに平らな場所が見えてきます。
さすがハルダンゲルヴィッダ、平らだね~なんて言いながら歩きます。
思いのほか早く紅葉が始まっていて、森林限界上は特に綺麗でした。
10km程度は歩いていますが、アップダウンがないので足は全然元気。
高原はやはり水はけが悪いのでぬかるみはあるものの、靴が濡れるほど浸かることはなく小屋までたどり着きました。
Lufsjåhytta着
Lufsjåの手前に川には橋が架かっているので渡ります。
トナカイの繁殖期はHyttaは閉まっており、橋は撤去されるようなので要注意。
13時過ぎにLufsjåhyttaに到着。
湖と広い高原の前にLufsjåhyttaがあるのがなんとも絵になる風景で来てよかったー。としみじみしました。
Hyttaの手前で釣り竿を持ったパーティーの姿を見ましたが、DNTのhyttaではなくその手前にある個人所有のhyttaに泊まっていたようです。
遊漁券を買えばLufsjå(湖)でも釣りができるので、竿持参の人はほかにも見ました。
マスやイワナあたりの魚が釣れるのかなー。と思っています。
Hyttaの様子
Lufsjåhyttaは16ベッドあり、うち8ベッドが予約可能。
前日に見た段階で既に予約可能なベッドは埋まっていたので早めに着いてベッドを確保しました。
満室になってしまった場合は近くに避難小屋があるのでそちらに泊まることになるようです。
結局この日は満室になっていました。
ハーフセルフサービスキャビンなので食材調達は小屋でも可能です。
採ったキノコは小屋に売っていたマーガリン(バターがないので代わりに)と、塩コショウでソテーにしたり、スープの素を買ってスープに入れたりしました。
小屋の隣に水場があります。
近くのピークまで
キノコの処理をしたり、ビール飲んだり、昼寝をしたりしてダラダラしたのち、夕食前にHyttaの近くのピークであるLufsjåhovda(1321m)まで散歩しにいきました。
若干ガスにまかれたものの、ハルダンゲルヴィッダの広さを実感する景色を拝むことができました。
Hyttaでご飯・宴会
Hyttaに戻って夕食を食べつつ、同じHyttaに泊まっている人たちと交流しました。
この日同じHyttaにいたのは、仲良しおじさんパーティー、BlefjellからFinseまで大縦走チャレンジ中のオランダ人ご夫婦、シャンパン2本とビール担いでパーティーしにきた3人組のお姉さん。
夜ご飯のあとみんなでワイン飲んだり、おつまみを恵んでもらったりしながら山の話、その他色々で盛り上がりました。
おすすめのルートやHyttaなどを教えてもらったり、ノルウェーの山文化を勉強するにはやはりノルウェー山屋と話すのがいいなあと思いました。
今回の記事の最後に印象に残った話の備忘録を書いています。
朝焼けを見に早起き
日の出前に起きてHyttaの少し上で朝焼けを眺めました。
泊まりで山にくると、夕焼けや朝焼けが見れるのがいいです。
空気がキンとしていて、すっかり秋になったんだなあ。と思いました。
おじさまパーティーの泊まっていたRom1は部屋の窓から朝焼けが見えるようなので、次はこの部屋に泊まりたいなあと思いました。
キノコとベリーを採りながら帰着
Hyttaであった皆さんとお別れをしたあとは湖の周りを散策して帰りました。
帰りはまた新しくRødskrubbが生えていたのでたくさん収穫して帰りました。
高原は水はけが悪く常に湿っているので、菌があって発生条件さえ整えばかなりのキノコが生えるようです。
いったい何と共生しているんだろう?と思いますが…。
Rødeskrubbはカバノキと共生するはずなので多分ブルーベリー(正確にはビルベリー)ではないのでしょう。
帰りの林道ではTyttebærが良い感じに熟してきていたので収穫。
クリスマスのお肉料理のソース用にしたいとおもいます。
Hyttaで会った人たちとのお話備忘録
最後にHyttaで会った人たちとの宴会中に印象に残った話の備忘録。
①ノルウェー人 登山出発時間めっちゃ遅い問題への答え
ずっと疑問だった「ノルウェー人 登山出発時間めっちゃ遅い問題」についての話題になったのですが、特に理由はないというか、日が暮れるまでには着けばいいかな、的な感覚だと思われる回答でした。
日本人は5時とか6時には登り始めるんだよね~。という話をしたら、なんで!?と言われたのですが、「日本の夏は昼過ぎから雲が湧きやすくて、毎日15時~16時あたりで雷雨になるから早出早着が基本なんだわ」とつらつら説明をしながら、あれ、もしかしてノルウェーが遅いんじゃなくて日本が極端に早いだけなのか…?と思ったりもしました。
早出早着文化は日本特有ですか?詳しい方いれば教えてください。
ちなみにこの話をした翌朝、おじさんパーティーが「今日は日本式で早く出発することにしたぜ!」と言いながら9時過ぎに出発していきました。
②アイスランドを馬で縦断した話
ノルウェー在住のアイスランド人のおじさまがいたのですが、この夏、馬でアイスランドを縦断してきたそうです。
6日間くらいとのことでしたが、途中で火山が噴火している様子が見れたりして面白かったよ~とのことでした。
このおじさまはクイーンの大ファンらしく、「クイーンは日本語の曲も歌ってるんだぜ~」とこの曲を教えてくれました。いい曲です。
Queen - Teo Torriatte (Let Us Cling Together) (Official Lyric Video) - YouTube
③Freiaのチョコレートは何が一番美味しいか
色んな味があるけど塩味とキャラメリゼされたナッツが入ったやつが一番美味しいよとの回答でした。
味見させてくれました。
ワインとのペアリングが良い感じ。
これですね。
④家族がいても自分の時間を持つことの大切さ
3人組女性パーティーの皆様はそれぞれ家庭があって、ご主人とお子さんがいるそうですが、今日は友達同士で登山の日とのこと。
ご主人はご主人で自分の時間を楽しんでいるとのことで、こういう日を作ることは家族にとって大事だ。という話をしていたのが印象的でした。
日本は昔よりは寛容になったとはいえ、母親が子供を置いて出かけること、まして泊まり、となるとちょっとハードルが高い印象なので、こういう文化は素敵だなあと思ったのでした。
⑤ノルウェーにもある交差縦走スタイル
縦走したいけど車の回収がだるいよね。という話をしていたら「仲間が増えれば交差縦走すればいいさ~」と言われて、過去の交差縦走で歩いた山行を教えてくれました。
やはりノルウェーでも交差縦走みたいなことをやるんだなと思いました。
この方々が去年した交差縦走は、仲良し夫婦数組が集まって、妻パーティー・夫パーティーに別れてそれぞれの登山口からスタート。
間にあるHytteで待ち合わせ。
そして一晩一緒に宴会して、車の鍵を交換し、再び妻パーティー、夫パーティーに別れてお互いの車を回収して帰ったとのことでした。いいですね。
⑥日本の自殺と痴漢の話はやはり特殊
アイスランド出身の方は心理学者とのことで、色々と話しをしていく中で日本人のワーカホリック的なところと、自殺の多さについての話題になりました。
日本の働き方もだいぶ変わってきたとはいえ「働き過ぎて人が死ぬ」ということは、労働より家族や自分の時間を大事にする文化の人には受け入れがたいことだろうと思います。
ノルウェー語の先生にも「日本人って労働時間がすごく長いんでしょ。なんで?」と聞かれたことがあります。
今回は話題に上がらなかったものの、「痴漢」もこちらの方には驚かれる話題。
それなりに人の多い都市に住めばほとんどの女性が経験することで、私も学生のとき何回かあるよ。警察に行っても根掘り葉掘り聞かれるだけで犯人は捕まらないし大体は泣き寝入りだね。と話すとぎょっとされますね…。
改めて外に出て日本のことを考えると、日本の良いところにもたくさん気が付くけれど、異常だよな。と気付くこともそれなりにあったりします。
⑦ノルウェー人も「イグチに毒なし」だと思っている
キノコ採った話をしていたら、毒キノコには気をつけろよ~と全員に言われるのですが、採るのはほとんどSkrubb、SteinsoppかKantarellよ~という話をしたら「スポンジは安全だな」との反応。
日本でも「イグチに毒なし」というのは有名ですが、ノルウェー人にもその感覚はあるようで。
実際のところはイグチ科のキノコにも毒があるものはあるので必ずしも安全ではないのですが。
以上、雑多なノルウェーローカルの皆様との会話も含めた記録でした。
ノルウェーの秋の良いところを詰め込んだような登山になりました。
いよいよ日も短くなってきて、秋らしい日々。
外での焚火も解禁されたので、凍えるような気温になる前に焚火パーティーでもしに行きたいですね~。