ノルウェーで最も有名なお菓子といっても過言ではない、赤・黄・緑の特徴的なパッケージのチョコレート、「KVIKK LUNSJ」。
ノルウェーの老舗チョコレートメーカーのFreiaの商品で、「KVIKK LUNSJ」は英語にすると「Quick lunch」という意味。
手早く済ませたいときの昼食に、という意味合いで、ノルウェーでは特にハイキングやクロスカントリースキーに行くときにこのKVIKK LUNSJを持っていくことが多いです。
実はKVIKK LUNSJ、包装の裏に「山のルール」が書かれているのをご存じでしょうか？
山や森が身近にあるノルウェーでは、幼い頃からこの掟を学んで育つのだろうなあと、初めてこれを見つけた時に感動したのでシェアしたいと思います。
KVIKK LUNSJとは
発売年・パッケージ
ノルウェーの老舗チョコレートメーカーのFreiaの商品で、発売開始は1937年と、実に80年以上の長い歴史を持つチョコレートです。
ノルウェー、スウェーデン、デンマークで販売されています。
赤・黄・緑のパッケージは発売当初から変わっておらず、チョコレートに描かれている鳥はアフリカハゲコウというコウノトリ科の鳥だそう。（ノルウェー語でMarabustorken）
キットカットそっくりな理由
KVIKK LUNSJはウエハースがミルクチョコレートでコーティングされていて、見た目はキットカットそっくりです。
KVIKK LUNSJが世に出たのは、イギリスでキットカットが発売された約２年後。
KVIKK LUNSJを作ったFreiaのオーナーは、息子のイギリス旅行土産のキットカットから着想を得たそうです。
（もちろんキットカットの販売元であるネスレとは商標登録を巡って争っていますが、ネスレ側の主張が退けられたのでKVIKK LUNSJは無事に販売され続けています。笑）
KVIKK LUNSJに込められた意味
KVIKK LUNSJは発売当初から「ハイカーやスキーヤーのためのチョコレートバー」として売り出されていました。
その背景には、かつてFreiaのオーナーがNordmarka（オスロの北側の森）で道に迷ってヘトヘトになったとき、「栄養価の高くて、仲間と分け合えるようなチョコレートがあったらいいのに…」と思った経験があったからだそう。
発売当時、栄養価の高いものが少なかったノルウェーではKVIKK LUNSJは卵１個とバターを塗ったパン2枚分の栄養価と言われていたらしいです。
イースターの定番
KVIKK LUNSJが一番食べられる時期は、ノルウェーのイースター、Påskeの時期。
イースターは、日が伸びて暖かくなってきたスキーシーズンの終わりにスキー旅行に出かける人たちが多いです。
そのスキー旅行のお供の定番はいつもKVIKK LUNSJとオレンジです。
ノルウェー人は年に９枚KVIKK LUNSJを食べると言われていて、そのうち５枚はイースター中に食べられていると言われています。
包装に書かれたFjellvettreglene（ノルウェー山岳法）
ノルウェーにはFjellvettreglene（山の行動ルール）と呼ばれるルールがあります。
これは赤十字とDNT（ノルウェートレッキング協会）が発行している山に入る人に向けたアドバイスで、現在は９つ提唱されています。
1934年にDNTが出した小冊子の内容からスタートし、大きな山岳事故の後や、アウトドアスタイルの変化などを考慮して何度か改定されています。
1967年のイースターで18人が遭難死してしまった事故のあとから、KVIKK LUNSJの包装にこのFjellvettregleneがプリントされるようになりました。
現在のKVIKK LUNSJに載っているFjellvettreglene
Fjellvettreglene
1,Planlegg turen og meld fra hvor du går.
2,Tilpass turen etter evne og forhold.
3,Ta hensyn til vær- og skredvarsel.
4,Vær forberedt på uvær og kulde, selv på korte turer.
5,Ta med nødvendig utstyr for å kunne hjelpe deg selv og andre.
6,Ta trygge veivalg. Gjenkjenn skredfarlig terreng og usikker is.
7,Bruk kart og kompass. Vit alltid hvor du er.
8,Vend i tide – det er ingen skam å snu.
9,Spar på kreftene og søk ly om nødvendig.
日本語訳
山の行動ルール
1,山行の計画を立て、どこに行くか伝えておきましょう
2,自分の実力やコンディションに合わせて計画しましょう
3,天気予報・雪崩予報を考慮しましょう
4,短い山行の時でも悪天候や寒さに備えましょう
5,自分や他人を助けられるように必要な装備を持参しましょう
6,安全な道を選びましょう 雪崩が起きやすい地形や不安定な氷を認識しましょう
7,地図とコンパスを使いましょう 常に自分がどこにいるか把握しましょう
8,時間内に引き返しましょう 引き返すことは恥ずかしいことではありません
9,体力を温存し、必要に応じて避難しましょう
自然が身近な国だからこそ…
ノルウェー語を習い始めて少しした後、KVIKK LUNSJを食べているときに何か山のルールらしきことが書いているぞ…と気が付いたときはびっくりしました。
身近に自然があってハイキングやスキーがいつでもできる環境だからこそ、安全に楽しむ方法を学ぶ機会も身近にあるんだなと感銘を受けました。
天気の急変や、雪の影響、厳しい寒さに晒されやすいノルウェーらしい９つのルール。
そして、１つ１つはとてもシンプルですが、大事なことがギュッと詰まっていて無駄のないルールだと思います。
たまに例外パッケージも
大体はこの山のルールが記載されていますが、時期によってはツアールートの紹介などがされているパッケージに出会うことも。
買うときは何が書かれているのか見てみて下さい！
Skøyte-tur（スケートツアー）、AKE-TUR（ソリツアー）、
Bål（焚火ツアー）など様々なプリント
Kvikk lunsj 70周年のときの記念CM
