5月にテレマーク地方の最高峰 Gaustatoppen(1883m)にて山スキーをしてきた日の記録です。
山頂付近までケーブル鉄道でアクセスができるので、お手軽に山スキーを楽しむことができます。(ハイクアップも可能)
またこのGaustatoppenは冷戦中、NATOの秘密軍事施設だったというなかなか興味深い背景を持つ山です。
山スキーをしなくても、鉄道に乗って山頂から景色を眺めたり、歴史を学ぶのに面白い山だと思います。
概要
・日程:2023年5月7日(日)
・天気:晴れ
・アクセス:オスロから車で2時間30分
・駐車場:あり
・通行料・駐車料金:なし
標高
・Gaustabanen(鉄道)の乗り場:1150m
・鉄道到着場所:1810m
・展望台(テレビ塔近く):1840m
・山頂:1883m
・滑った標高差:700m
(展望台~駐車場)
ルート
参考:Gaustabanen「Gaustatoppen på ski」
Googleマップ
リューカンについて
世界遺産のある町
Gaustatoppenはオスロの西にあるテレマルク県のリューカンという町にあります。
かつてはテレマーク地方の産業の中心として栄えた町で、水力発電所、送電線、鉄道跡などの産業施設群は「リューカン=ノトデンの産業遺産」としてユネスコの世界遺産として登録されています。
1905年に合成肥料などを生産するノルスク・ハイドロ社という会社が設立されたことで、このあたり一帯が工業地域として発展しました。
肥料生産工場で多大な電力を必要とするために、発電所が建設されたそうです。
ノルスク・ハイドロ重水工場破壊工作
前述のノルスク・ハイドロ社は、「ノルスク・ハイドロ重水工場破壊工作」で有名。
(ノルウェー語だとNorsk Hydro、ノシュク・ヒドロ社)
ノルスク・ハイドロ社は肥料生産の過程の副産物として「重水」を商業的に生産しており、この重水は核兵器の開発に利用できることが分かっていました。
第二次世界大戦中ノルウェーがナチス=ドイツに占領された際、この重水がナチス=ドイツの核兵器開発に利用されると懸念した連合国はこの重水工場を破壊することを決定。
ノルウェー人の破壊工作と連合国の空襲などによってナチス=ドイツの重水利用は阻止されました。
(参考)
Gaustatoppenについて
テレマーク地方の最高峰
テレマークはオスロの南西に位置する地方です。
ちなみにテレマークスキーは、このテレマーク地方を中心に発展したスキースタイルです。
Gaustatippenはテレマーク地方の最高峰で、晴れた日にはノルウェーの6分の1を眺めることができると言われています。
独立峰で、遠くから見てもとても目立ちます。
「ノルウェーで一番美しい山」と呼ばれることもあり、多くの画家や写真家の題材になってきた山です。
尾根の筋が模様のように見えることが特徴的です。
遠くからも見える塔はテレビ塔です。
NATOの秘密軍事基地として利用されていた
このGaustatoppenとケーブル鉄道は1959年に完成し、冷戦中にNATOの秘密軍事施設として利用されていました。
機密扱いでなくなったのは2020年ということで割に最近です。
ソ連と国境を接しているノルウェーは、NATOにとって対ソ連の早期警戒と諜報活動のために重要な場所。
Gaustatoppenの鉄道は観光需要を期待して建設が計画されていましたが、NATOに接収され鉄道や施設の商用利用の計画は立ち消えになりました。
Gaustatoppenの上に設置した通信基地は、ノルウェーの軍事無線ネットワークのハブとして機能し、さらに鉄道があることで気象条件に左右されることなく基地へのアクセスができるようになりました。
全体に公開されていない機械室や従業員の宿泊部屋などに入ることができるガイドツアーも行われているそうです。行ってみたい。
Gaustatoppen | Omvisning i de hemmelige rom | Gaustabanen
山行記録
駐車場
鉄道の乗車場所の近くにある駐車場に停めました。
小さい駐車場ではないですが、いかんせん来る人がそこそこ多い山なので混むタイミングだと駐車に苦労するかもしれません。
Vekomstsenterで乗車券を購入
おみやげなども売っているセンターの中でチケットを購入できます。
営業時間は春だと9時から16時まで。
片道で330krでした。往復だと450kr。
(夏のGoogleレビューを見た感じだと今はもう少し値上げしているかも)
回数券もある様子。
センター内ではトイレも無料で利用できました。
Gaustabanenに乗車する
センターの隣に乗り場があります。
一度に乗車できる定員は20名程度と少ないので、乗る時間より早めに並んでおくのがおすすめ。
鉄道は乗り換えがあります。
まずは1151mの場所にある乗り場から乗車して平行移動。トロッコに乗っている気分。
その後、次のケーブルカーに乗り継いで傾斜39度のトンネル内を登っていきます。
スキーは外のボックスに入れます。
乗り込んで登っていく過程は結構急なところを登るんだなあ~。よく作ったなあ~。とプチ感動。
立山アルペンルートのような雰囲気ですが、Gaustabanenはずっとトンネルの中を進むのでより閉鎖的で暗いです。
山頂駅からロッジ・テレビ塔の横まで
山頂駅到着。
ずっと暗い中にいたので日差しがきつい…。
ひとまずツボ足で50mくらい登ってGaustatoppen turisthytteの横まで。
DNTが運営しており、ワッフルなどの軽食や温かいコーヒーなどを購入できます。
トイレなどもあるので休憩に良さそうです。
宿泊もできます。
私たちはすぐに滑りたかったので今回は寄りませんでした。
そこからまたテレビ塔まで少し登って、展望台になっている場所から景色を眺めました。
山頂はここではなく、さらに細尾根を歩いた先にあります。
ほとんどの人は山頂まで行かずにこの展望台までで終了します。
滑走
滑り出しが若干急ですが、大体の場所は斜度30度以下です。
尾根の間を滑る場合は40度近い場所も。
シュプールがあるのは見えましたが私は一生滑れることはないでしょう。
新雪が降ったわけでもザラメになっているわけでもない微妙なタイミングだったので、滑って楽しい雪ではなかったですが、ともかく景色は良いです。
ハイクアップするとこんな感じ
実はこの前日、駐車場からハイクアップして登っています。
が、私の体調不良により途中撤退。
翌日にケーブル鉄道でリベンジとなったのでした。
私たちははVelkomstsenter近くの駐車場からスタートしましたが、もっと下の方にも駐車場がいくつかあるので、さらに長くハイクアップ&滑走することも可能。
雪崩装備が必要。岩に注意
鉄道で簡単にトップまでアクセス可能ですが、スキー場ではないのでもちろん非整地です。
ビーコン・シャベル・プローブなどの雪崩装備のない人は入山することが推奨されません。
また、降雪後は吹き溜まりなどに岩が隠れていることもあるので注意。
「あまりにもスキーに適さないコンディションや天候だと判断した場合はスキー客を乗せない」とGaustabanenのホームページには書いていますが、どの程度でその判断がされているのかは不明。
「スキーヤーの行動は自己責任で」と、看板やチケットの裏など至る所に書いてあります。
まとめ:テレマーク観光とともに楽しみたい山
独立峰で風の影響を受けやすいこともあり、雪質が良いタイミングを狙うのがなかなか難しい山でもあると思います。
しかしながら、ノルウェーの6分の1を見渡すことができる素晴らしい景色を楽しめる良い山です。
ケーブル鉄道も興味深い背景があり、勉強になって面白かったです。
オスロからべらぼうに遠くないところも良いですね。
そしてリューカン周辺は世界遺産になっている水力発電所や鉄道跡を見たり、Tinnsjåという大きな湖の周りで景色を楽しんだり、と山以外の楽しみ方も合わせてできるところも魅力的だなと思います。
私たちはTinnsjåに面した近くのキャンプ場にも泊まりました。
(前述のノルスク・ハイドロ重水工場破壊工作ではTinnsjåで重水輸送中の連絡船が沈められたという歴史もあります)
以上Gaustatoppenのスキー記録でした。
まだ書き損ねているスキーの記事がいくつかある中で2023-24年のスキーシーズンが始まりそうですが、気が向いたときに書き起こしておこうと思います。